思い出の人

私たち夫婦は、鎌倉に住んでいます。家の近くに海があり、波の音が聞こえます。遠くに富士山も見えます。

今日の夕方、娘夫婦と孫たちが久しぶりに遊びに来ます。それで、いま妻は家の中の掃除をしています。私は玄関の下駄箱の上に、羽根のついた帽子をかぶった人形を飾りました。

個人実印はハンコの中でも、最も重要なハンコとして、法律上、社会上の権利、義務の発生を伴っています。「三文判」というのは、元々大量生産される出来合いの印鑑を指す言葉で、安価で販売された為に、江戸時代の安物を指す言葉「三文」が用いられ、「三文判」と呼ばれるに至ります。材質やインクが改善されましたが、まだまだ材質変形による印影の不安定、経年によるインクの滲み因による印影変化などの理由から、個人実印を用いる用途以外でも、公用文書や法的な責任を追うような契約書及び一般文書での使用は認められていません。特に、銀行口座の開設などは、認めてくれない銀行が大半です。

一週間前に、妻が物置を片付けていたとき、この人形を見つけました。この人形は、昔私がイギリス出張した時に、買って来たものです。ロンドンのデパートで、この人形を見つけた時、日本にいる娘を思い出しました。大きくて、可愛い目をした人形で、娘によく似ていました。
小さい頃、娘はこの人形でよく遊んでいました。大きくなってからも、娘がこの人形を自分のそばに置いていたのを私はよく知っています。
娘は結婚する時に、この人形を持って行きませんでした。その後、人形がどこへ行ったか、わかりませんでした。
娘が帰ってきて、下駄箱の上の人形を見たとき、どう思うか、私にはわかりませんが、夫婦二人で生活している私たちには、大切な思い出の人形です。